2000-01-01から1年間の記事一覧

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それからしばらくの間、白衣の三人は家の周りを念入りに調べていった。 眼鏡の人、ノートって言ったかな? 彼があの機械を急にボクに向けた時はドキっとした。 機械は少し反応してたけど、魔法が使える人間なら正常な範囲だったみたい。 でもそれ以上にビッ…

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妙な箱型の装置。 彼女がそれを倒れた木に近付けると、ピーッと耳に刺さる音が鳴った。 「こんなに大きな反応は、今まで見たことがないわ」 「何が起きた、んだ?」 リーリムさんはまだ息切れが治まらないらしい。 二人は興奮気味に、装置を覗き込んでいる。…

8

どうしたもんかと頭を抱えたものの、何の名案も浮かぶことはなかった。 まあ、当たり前か。 結局ボクはしばらくの間、俯いた視線の先の足下を歩き回る虫を、意味もなくぼんやり眺めていた。 「アリル、大丈夫か!?」 リーリムさんの声に、ボクは顔を上げた…

7

「なんだこれ」 真っ二つのその木は、カンナをかけたみたいにツルツルの断面をしている。 ベンチから立ち上がろうとして、ボクは左手に何か握ってるのに気づいた。 「……剣?」 見慣れないそれを見つめると、ソイツと、目が、あってしまった。 『よーぅ、相棒…

6

新居は、研究施設の一角にあった。 施設本館とは庭を挟んで離れてるものの、同じ敷地内にある一軒家だ。 今までより広くなったけど、白すぎる壁は殺風景で寒々しい。 まあ、少しずつ慣れていくものかもしれないけどね。 リーリムさんは荷物の箱一つ開ける間…

5

その翌日から、ボクは自分の部屋の物を箱に詰めたり、学校の先生や友達に挨拶に行ったりと、忙しく過ごした。 結局、色々な関係で、引っ越しは一週間後に決まった。 王都に行く理由は、リーリムさんの仕事の都合らしい。 昔働いていた研究施設から、職場復帰…

4

今日の授業は魔法薬学。 そう、この前の薬草が使われる日だ。 自分で使う分量よりもたっぷり採って来れたから、余った分はクラスメイトに安く売ってやった。 おかげでボクとシェンナの懐はホカホカだ。 乾燥させてカラカラになった薬草を片手に、ボクらは実…

3

それは、髪の長い女の人だった。 ボクらの町の人ではない、と思う。 だって、着ている服が違う。 うちみたいな田舎では手に入れるのも難しい、高そうなシャツとスカート。華奢な肩を、ストールが優しく包んでいる。 そんな感じの、シンプルなんだけど上品に…

2

着替えを済ませて階段を降りると、人ん家のソファで勝手にくつろいでたシェンナがビックリするくらい不満そうな顔をした。 「つまんない格好! 何でもっとオシャレな服とか着ないかなぁ? アリル、顔はそこそこ悪くないのに」 「うるさいなぁ。森に行くのに…

小説用スペース

何もない日。 普通の暮らし。 退屈で幸せな毎日が、ずっと続くはずだったのにーーチュンチュン言ってる鳥の声がする。 朝なんだなぁと、まどろみながらぼんやり思う。 今日は学校が休みだから、あわてて起きなくても平気。 この贅沢なひとときを、もう少し堪…